先日、国立科学博物館で開催中の展覧会「学習マンガのひみつ」展に行って来ました。今回は「理科」「歴史」「伝記」を扱った学習マンガが中心……ということで僕が普段描く物とは少し違うのですが、それでもとても興味深く拝見させていただきました。
展示について

展覧会場に入ってすぐのところに、自由に読むことができる学習マンガを揃えた閲覧スペースがありました。ここには僕の描いた「植物油のひみつ」や、ネームを担当した「角川まんが学習シリーズ・日本の歴史」第1巻などもありました。他にも興味深い本がたくさんあり、子ども達を中心に賑わっておりました。
展示自体は学習マンガの歴史をサラッとなぞるような形。特定の作家を大きく採り上げる……ということは無く、比較的平均的に紹介されていた印象です。
そんな中でもやはり「韓国発の学習マンガが大人気」と紹介されておりました。「サバイバル」シリーズや「理科ダマン」などですよね。確かにこれらの勢いはすごいです。
しかし日本も「ドラえもんの学習マンガ」等、IPを活かしたマンガが多数あり健闘している、と感じました。
「ひみつ」について
今回の展示のタイトルにもついている「ひみつ」という言葉。有名なところでは学研の「ひみつシリーズ」等があります。しかしこのシリーズはずいぶん前に絶版という形になっており、その後「新ひみつシリーズ」に引き継がれました。ただこのシリーズも十年ほど前から刊行されていないようですね。
そして僕が普段よく描かせていただいているシリーズ。こちらにも「~のひみつ」というタイトルが付けられますが、これ、正確には「ひみつシリーズ」ではございません。「マンガでよくわかるシリーズ」という別ラインです。
企業の協力の下作られて書店では販売されず全国の図書館や小学校の図書室などに配られます。なので、子ども達の知名度はそこそこあるのですが大人にはあまり知られておりません。多分昔ながらの「ひみつシリーズ」と混同している人も多いんじゃ無いかなぁ。
もちろん大きなくくりで見れば「マンガでよくわかるシリーズ」も立派な学習マンガです。義務教育の教科内容を扱うような市販の学習マンガとはちょっと違いますが、これをきっかけに様々な物に興味を持って、将来に繋げて欲しい……。いつも、そんなことを考えながら執筆しております。
これからの学習マンガ
サバイバルシリーズも理科ダマンもドラえもんの学習マンガも素晴らしいです。あとはうんこドリルとかもですね。子どもが興味を持って学べるコンテンツというのは今後もどんどん増えていって欲しい。
ただ、自分がよく描かせていただいている「マンガでよくわかるシリーズ」的なアプローチにはそろそろ限界のような物も感じてきています。というのもこのシリーズ、キャラや設定を引き継げるような作りになっていないため、それ一冊でおしまい。子ども達の記憶に残りづらい傾向にあるように思うからです。
もちろん一冊一冊はとても良い本ですし役にも立っていると思う。でも例えばそれを読んだ子ども達が大人になったとき数百冊もあるシリーズのキャラクターやストーリーをそれぞれちゃんと覚えていると思うかと問われれば、ちょっと首を傾げてしまいます。先ほども書いたように「将来に繋げる」形では役に立つとは思うのですが、マンガとして記憶に残りづらいというのはマンガ家としてちょっと悔しい。やはり「サバイバルシリーズ」のようにある程度キャラクターを固定化して、そのキャラクター達が様々な物に触れる……という形の方がマンガとしては記憶に残りやすいのではないか。そしてさらに、毎回キャラクターやストーリーの設定を新たに覚え直す必要が無いだけに学習に集中できるのではないか、とも思うのです。
今後も「マンガでよくわかるシリーズ」は続くと思いますし、続けていくべきコンテンツだとも思います。ただ、それとは別ラインで……キャラクター主体の何かが作れたら良いなぁ、とも思っています。自分が死んだ後も残っていくようなキャラクター。そんなのが理想です。
とかなんとか言いつつ結局ドラえもんやら名探偵コナンやらといった「商業漫画のキャラクターを流用した学習マンガ」の方が残っていくのかも、とか思ったりもします。日本はそっちが強いですからね。
さて、これからの学習マンガはどうなっていくことでしょう。そして僕も何をどうしていくべきか。そんなことを考えさせてくれる良い展示でした。2025年11月9日まで。



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