藤子・F・不二雄大全集第三期第九回配本

ちょっと忙しく、更新が滞っておりました。今回は五月末に配本となった以下の二冊を紹介します。

新オバケのQ太郎3
「小学五年生」「小学六年生」掲載作品完全収録、とのこと。発表年は1971年から1973年。一部1976年の物もあるようですが、これはジャンプに掲載された特別版が掲載されている、と言うことのようです。
ちなみに僕が生まれたのは1972年。なのでちょうど作品が掲載されている間に産まれた、と言うことになります。普通は赤ちゃんの頃連載されていた漫画なんて記憶に無いはずですが、なぜかチラホラと知っている話がありました。これは後に単行本で買って読んでるんだろうな。
巻末の解説は、京極夏彦氏。妖怪的な視点からオバQを観察しており、ちょっと面白かったです。
大長編ドラえもん6
「創世日記」「銀河超特急」「ねじ巻き都市冒険記」の三本を収録。
中でも思い出深いのは「ねじ巻き都市冒険記」です!この作品はF先生の遺作としても有名なのですが…実は僕、この作品にアシスタントとして参加しています。当時の藤子プロのチーフアシスタント氏はドラベースで有名なむぎわらしんたろう氏だったのですが、そのむぎわら氏は僕の通っていた専門学校の先輩だったのです。その関係で「F先生の原稿ヤバイから臨時で手伝いに来て!」と言われ、四日だけ手伝いに行ったのです。


例えばコレ。のび太の影の部分のアミを、僕が描いています。コレ、斜め2方向+縦線の「3カケ」なのですが、うっかり気を抜くと真っ黒になっちゃうんですよね。実際当時の僕は筆圧が今以上に高かった物で、どうしても全体に太めに、濃いめになってしまいました。むぎわら氏にも「濃いね…」と言われてしまった。スミマセンスミマセン。


他にはコレ。この効果音部分のベタとトーンも僕です。面白いのがコレの指示のされ方で、先輩アシスタントさんに「えーと…ズシリってカンジの処理をしておいて」と言われました。ズ…ズシリ(笑)!?
正直よくわからなかったのですが、「ベタがトーンを押しつぶしているような」処理にしてみました。…ズシリってカンジに見えますか(笑)?


あとはこの背景とかも僕ですね(ただし木の葉のグルグルは他の方)。良く見ると猿がつかんでいる植物の蔓が歪んでたりします。この辺はまだ若く、技術が無いなぁ…と思える部分。枝振りとかも不自然。ちょっと恥ずかしいです。

他にも418ページ一番上の海の背景とかも僕だったりしますが、取り上げていくとキリが無いのでこの辺でやめておきます。いやー、それにしても懐かしい。
僕はアシスタント経験に乏しく、今のところプロのマンガ家さんのアシスタントをしたのは、この時だけです。でも、多分これから先どんな人のアシスタントをやったとしても、この時の経験が一番なのは変わらないでしょう。
小学生の時から大好きだった「藤子不二雄」先生の漫画。そして「藤子不二雄賞(現在の小学館新人コミック大賞児童部門)」への投稿。受賞。コロコロ(別冊ですが)でのデビュー。そしてたった四日だけのF先生のアシスタント…。当時はなんだかとても「繋がっている」実感を持っていました。

その後担当さんとの折り合いが悪くなり僕はコロコロ編集部から抜けてしまうことになるのですが、それでもやっぱり「コロコロは特別」と思えるのは、このような経験があったからなのだと思います。

今はもう学習マンガや講義、教則本の執筆などがメインになっていますが、機会があればまた古巣に戻って何かやりたいなぁ、と考えています。…いや、あそこは異常に層が厚いのでちょっとやそっとで戻れたりしないことはわかっているんですけどね。

ともあれ、たとえ活躍する場がどこであっても、良いマンガを描くことがF先生への恩返しになるんじゃないかなぁ…と思っています。
この作品は、そういう、初心を思い出させてくれる貴重な作品の一つなのです。

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